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タグ: 子育て

国立天文台の門をくぐり、木の生い茂った森のような小道を進んでいくと、「星と森と絵本の家」が見えてくる。もともとは天文台の官舎だった古い日本家屋を移築して建てられたもので、どこか懐かしい、レトロな雰囲気が漂う。

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 東京都三鷹市にある「星と森と絵本の家」は、2008年にその場所に建物を構えた。家の中には昭和の生活を感じさせるちゃぶ台やダイヤル式の壁掛け電話、床の間や古い戸棚が置いてあり、ほっと落ち着いて、つい長居してしまいたくなる。そして「絵本の家」という名の通り、たくさんの本が置いてあり、子供も大人も、思い思いの本を手にとって、本棚の前や居間のソファ、縁側など好きな場所に座り、本を読むことができる。
面白いのは本の配置だ。絵本も詩集も図鑑も、すべて同じ本棚に収まっている。ここでの本の分類は、本のタイプ別ではなくテーマ別。例えば「ほし」の棚を見ると、星にちなんだ絵本から、本格的な図鑑まで様々なタイプの本が隣り合わせで並べられている。物語が好きな子も、本格的な科学のことが知りたい子も、その知的好奇心をどんどん広げていけるような仕掛けになっているのだ。約4,500冊の蔵書のうち、2,000~2,500冊が公開され、その年のテーマに沿って、また春夏秋冬、季節を感じられるように本の入れ替えがされている。

月・太陽・宇宙などテーマに合わせて本や展示が変わる

  家の外に目を向けると、広々とした中庭が広がっていて、子供たちが元気に遊びまわっている。庭の奥にはみんなで掘った井戸や池があったり、手作りのブランコやハンモックがあったり、まだ小さい赤ちゃんは家のなかでお母さんと絵本を読んでいても、大きくなると、友達と一緒に外に飛び出して、実際に土や木、植物や虫と触れ合いながら、その興味のフィールドをどんどん広げていくことができる場だ。

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 「ここが子育て支援施設と言ったことはありません。」「モノをつくりながら、人が知りあっていく面白さがここにはあるんです」(築地律館長)

 絵本の家は一見すると、子育てママが集い、子供と絵本を読む施設である。しかし中に入ってみると、その活動領域の広さに驚かされる。そもそも絵本の家は、ただ絵本を読んでもらうことが目的ではない。国立天文台と共同のプロジェクトとして、最新の「科学」を発信していくというミッションも持つ。だから、テーマ設定や本の選定には、毎回絵本の家のスタッフと天文台のスタッフが頭を突き合わせて、試行錯誤しているのだという。科学には神秘の世界があり、どこか文化的要素もある。「科学」と「絵本」はそれぞれ違う領域で、遠いテーマのようでありながら、実はとても親和性が高い。

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 イベントや活動は館のスタッフのサポートのもと、星と森と絵本の家に普段訪れる、お母さん、お父さんや子供たちの手に委ねられている部分も大きい。「星と森と絵本の家フレンズ」や「ジュニア・スタッフ」というボランティアの他、「○○ちゃんのお母さん」や「○○ちゃんの友達」、といった人づてのつながりも生きて、そのイベントや活動に協力してくれる団体や業者までをも芋づる式に巻き込んでいくような面白さがある。星と森と絵本の家の活動趣旨の意義の高さと明確さがその勢いを後押ししているのだろう。

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 利用者と館の関係性やその考え方について築地さんにポイントをお聞きしたところ、館の運営に協力してくれるボランティアは居るものの、あえて友の会などで組織化はせず、それぞれが興味のあるフィールドで広がっていることだと語ってくれた。「モノをつくりながら人が知り合っていくおもしろさ」を大事にしたり、モノをつくるにしても、業者任せにはせず、できるだけ本人たちで取り組めるようにしているそうだ。地域のコーディネーターとして、人と人、人とコトをつなぐ役割を担っているのである。

黒木 奈々恵


はっち一枚目



JR八戸線本八戸駅で降り、目的地はっち目指して歩き始めるも、道沿いで目につく緑色のふきだしたち。「もう30年もやっているらしいよ」「このマスター、サッカーも大好きらしいよ」「八戸ではじめて!のnail salonらしいよ」 など。まちの風景に化しているこの緑色のふきだしは何ものか?と思っていたところ、期間限定プロジェクト「八戸のうさわ」の一部だったもの。イベントが終わった今も、気に入ったお店はそのままに残しているのだそう。

さて、そのうさわの発信源、八戸ポータルミュージアム「はっち」に足を踏み入れて驚いた。 はっちが、「ポータルミュージアム」と標榜する所以。それは、従来の専門分野にそった資料展示を行うミュージアムの機能をはるかにこえていたからだ。八戸の伝統文化やお祭り、偉人を紹介する展示、B級グルメのミニチュア展示はもちろんだが、市外からの来訪者に向けた横丁や市場など八戸の見どころを紹介する観光案内、子育て支援を目的に小さな子どもも大人もゆったり過ごせる交流スペース「こどもはっち」、また、八戸の地域資源を活かした市民によるアンテナショップの数々、音のスタジオやキッチン、ひろばなど、フロアのいたるところに、人と人が交流するスペースが設けられているのだ。

まさに八戸に暮らす人々の生活の息づかいがきこえてくる、八戸の人と魅力が活きている場所だった。

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▲はっちのエントランスにて。カラフルな288体の八幡馬たちが迎えてくれます。

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▲こどもはっちにて。モチーフの「8」を館内様々なところで発見する楽しみがあります。

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▲食のものづくりスタジオ、『里山夢食堂』さんにて。ここにも吹き出しが!

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▲市内アーティストと子どもたちの作品 ~八戸はみんな家族~

市役所の方にお話を伺ったところ、はっちは、シャッターがおり空洞化していくまちの中心地、商店街に活気を取り戻すため、中心市街地活性化の事業の起爆剤としてたちあがったとのこと。地域の資源を大事に想いながら新しい魅力を創りだすところとして、「はっちは、まちを元気にします」をミッションに掲げている。

2011年2月のオープン以来、様々な取り組みに走り続けているはっちだが、その成果が、まちなかの歩行者の数の増加や、空いていた店舗が復活するなど様々な事象にあらわれはじめている。


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佐竹和歌子

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