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来場者の投票で大賞を決定!
絵金蔵『えくらべ復活展』
/高知県香南市赤岡町

 「絵金祭り」とは一年に一度だけ夏の夜に、それぞれの家が所有する絵金の作品を軒先に飾り、蝋燭の灯りに照らされた絵を鑑賞する(えくらべ)にちなんだ祭りである。地域ぐるみの取り組みとして注目されてきた。
 
 2012年8月須留田八幡宮神祭と絵金祭りが行われた4日間、赤岡町商店街を中心に、現代作家の屏風作品13点を絵金屏風と同時に並べる「えくらべ復活展」が開催された。そこで、観光客による投票イベントを実施した。えくらべ(絵競べ)は、絵金が生きた時代の風習のひとつで、土佐の庶民は様々な絵師に芝居絵屏風を注文して競い、最良の作品を出した地域はその年の豊作を約束されたというもの。

日没と同時に街灯が消され、蝋燭がともる。

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白井 至子

自然と彫刻とそこに生きた人々と、悠久に在り続ける場には人の想いの積層がある 

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 北海道の中央部、石狩平野の東端に位置する人口2万6千人の美唄市。ここに、アルテピアッツァ美唄はある。アルテピアッツァ美唄を人々が訪れる理由はいくつかあげられる。世界に名だたる彫刻家安田侃の作品に出会える広大な公共空間。北海道の雄大な自然と調和する彫刻作品の数々に座ったり触ったり自由な観賞が許される稀有な場所だ。また、かつて栄えた炭鉱の町の再生への挑戦として、廃校をリノベーションして蘇らせた場の活用の仕方への関心など、特異な事例を見たいという好奇心がこの地に赴かせる。机上の情報をもとに、はじめてその地に踏み入るのだが、想像で価値を測っていた自身の浅はかさを恥じることになる。

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 アルテピアッツァ美唄は、石炭産業が隆盛を極め、石炭と人とあふれんエネルギーに満ちた土地で生まれ育った彫刻家安田氏が、時代の流れとともに変わり果てた故郷の姿を前に生じた想いに創始する。当時、旧栄小学校の体育館をアトリエの代わりとして市から借り受け、作品を置いた。すき間だらけの古い木造の旧校舎の1階は幼稚園として、幼い園児たちがアトリエをのぞきこみ、歓声を上げ、作品を駆け巡っていた。未来ある子どもたちのために、子どもたちがのびのびと過ごすことのできる広場にと、財政厳しかった美唄市の決断とともに、芸術広場としての再生へ舵を切った。
 
 彫刻家安田氏はこう語った。「アルテピアッツァ美唄は、来訪者が自分を見つめる、自分のこころを感じられるようにつくった場である」と。「懐かしいと思う感情も、美しいと涙する感動も、自分自身のこころをうつしている。出来て20年、ここで育った子がやっと大人になった。その子が再び訪れて何を思うか、ここからが本当の意味の始まりである。」と。

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 アルテピアッツァとは、イタリア語で芸術広場のこと。7万㎡を超す広大な敷地に、点在する40数点の彫刻と、当時の面影を残した建物、(1階が市立栄幼稚園、2階がギャラリーの旧校舎、アートスペース兼ホールの旧体育館、「こころを彫る授業」が行われるストゥディオアルテ(体験工房)とカフェアルテ)、そして豊かな木々や動物を目の前にした圧倒的な自然がアルテの構成要素だ。
 アルテの来訪者はみな「また来ます」という言葉を残して帰途につくという。それもそのはずだ。目を開いてみた先にある光景に同じ瞬間は二度とない。それは、この場所のあらゆるシーンが、意図をもって配置され、自然と共に生きているからだ。そしてその感じ方も見え方も全ては、自分の行為に還る。本物を目前にして何を想うか、まるで己をうつす鏡そのものだ。
 
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 この広大な土地で厳しい寒さを乗り越えながら、すみずみまで手入れされた空間をつくり続けるには相当な維持費がかかる。2005年4月、アルテピアッツァ美唄を運営する主体として、NPO法人「アルテピアッツァびばい」が設立された。「アルテ市民」としてこの場を支えていく「ポポロの制度」を開始し、現在会員は市内外に約600名いる。よくある賛助会員の制度と違うのは、会員もアルテ市民としてNPOの運営に参画し、市民としてアルテピアッツァを守る活動に参加できることだ。それでも厳しい市の財政状況や社会経済情勢を受け、入場料を取ることもなく、会費や寄附金のみで賄うにはまだまだ到底費用は足りていない。
 
 NPO法人「アルテピアッツァびばい」代表の磯田氏は、立ち上げの際に力強く語った。「安田侃という類稀なアーティストに出会い、数や量で計るのではない、心に沁みる豊かさの創造にむけた壮大な実践の戦列の中にいる。右肩上がりの経済的発展を疑うことのない中でつくられてきた物差しを越えて、豊かさの新しい基軸を創造しようという旅の始まりでもある。」と。

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 夏、アルテの恒例行事として、毎年盆踊りが開催される。地元の人も帰省した者も皆が一緒になって輪になって踊る。アルテがこの場に在ること。それは、栄枯盛衰その名のままに辿った過去の記憶を真実として、この地を離れざるを得なかった多くの人への惜別の気持ちと共に、あたたかい灯をともしていつでもお帰りと迎え入れてくれる場であること。東京から初めて訪れた私のこころにもほっと灯されたこのあたたかみがあるように、この先も還りたいふるさととして、訪れた人の心に残り続けるのだろう。

佐竹 和歌子 

国立天文台の門をくぐり、木の生い茂った森のような小道を進んでいくと、「星と森と絵本の家」が見えてくる。もともとは天文台の官舎だった古い日本家屋を移築して建てられたもので、どこか懐かしい、レトロな雰囲気が漂う。

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 東京都三鷹市にある「星と森と絵本の家」は、2008年にその場所に建物を構えた。家の中には昭和の生活を感じさせるちゃぶ台やダイヤル式の壁掛け電話、床の間や古い戸棚が置いてあり、ほっと落ち着いて、つい長居してしまいたくなる。そして「絵本の家」という名の通り、たくさんの本が置いてあり、子供も大人も、思い思いの本を手にとって、本棚の前や居間のソファ、縁側など好きな場所に座り、本を読むことができる。
面白いのは本の配置だ。絵本も詩集も図鑑も、すべて同じ本棚に収まっている。ここでの本の分類は、本のタイプ別ではなくテーマ別。例えば「ほし」の棚を見ると、星にちなんだ絵本から、本格的な図鑑まで様々なタイプの本が隣り合わせで並べられている。物語が好きな子も、本格的な科学のことが知りたい子も、その知的好奇心をどんどん広げていけるような仕掛けになっているのだ。約4,500冊の蔵書のうち、2,000~2,500冊が公開され、その年のテーマに沿って、また春夏秋冬、季節を感じられるように本の入れ替えがされている。

月・太陽・宇宙などテーマに合わせて本や展示が変わる

  家の外に目を向けると、広々とした中庭が広がっていて、子供たちが元気に遊びまわっている。庭の奥にはみんなで掘った井戸や池があったり、手作りのブランコやハンモックがあったり、まだ小さい赤ちゃんは家のなかでお母さんと絵本を読んでいても、大きくなると、友達と一緒に外に飛び出して、実際に土や木、植物や虫と触れ合いながら、その興味のフィールドをどんどん広げていくことができる場だ。

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 「ここが子育て支援施設と言ったことはありません。」「モノをつくりながら、人が知りあっていく面白さがここにはあるんです」(築地律館長)

 絵本の家は一見すると、子育てママが集い、子供と絵本を読む施設である。しかし中に入ってみると、その活動領域の広さに驚かされる。そもそも絵本の家は、ただ絵本を読んでもらうことが目的ではない。国立天文台と共同のプロジェクトとして、最新の「科学」を発信していくというミッションも持つ。だから、テーマ設定や本の選定には、毎回絵本の家のスタッフと天文台のスタッフが頭を突き合わせて、試行錯誤しているのだという。科学には神秘の世界があり、どこか文化的要素もある。「科学」と「絵本」はそれぞれ違う領域で、遠いテーマのようでありながら、実はとても親和性が高い。

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 イベントや活動は館のスタッフのサポートのもと、星と森と絵本の家に普段訪れる、お母さん、お父さんや子供たちの手に委ねられている部分も大きい。「星と森と絵本の家フレンズ」や「ジュニア・スタッフ」というボランティアの他、「○○ちゃんのお母さん」や「○○ちゃんの友達」、といった人づてのつながりも生きて、そのイベントや活動に協力してくれる団体や業者までをも芋づる式に巻き込んでいくような面白さがある。星と森と絵本の家の活動趣旨の意義の高さと明確さがその勢いを後押ししているのだろう。

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 利用者と館の関係性やその考え方について築地さんにポイントをお聞きしたところ、館の運営に協力してくれるボランティアは居るものの、あえて友の会などで組織化はせず、それぞれが興味のあるフィールドで広がっていることだと語ってくれた。「モノをつくりながら人が知り合っていくおもしろさ」を大事にしたり、モノをつくるにしても、業者任せにはせず、できるだけ本人たちで取り組めるようにしているそうだ。地域のコーディネーターとして、人と人、人とコトをつなぐ役割を担っているのである。

黒木 奈々恵


山口情報芸術センター、通称「YCAM(ワイカム)」。東の仙台メディアテーク、西のYCAMとも言われる、図書館とメディア系の場が一体となった空間だ。
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YCAMは、メディアテクノロジーを軸とする新しい芸術文化の創造・発信を担い、また併設する山口市立中央図書館と一体となってまちづくりの中心的な役割を担う施設として2003年にオープンした。館内は、タイプの異なる3つのスタジオや創作・学習室、カフェ、そして最新の映像情報機器とそれをサポートするスタッフを擁した「YCAM InterLab」があり、隣には図書館がある。
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 これまでダンスや演劇といった身体表現、メディアアートや現代美術の企画展、市民の美術発表の場、演劇上演やワークショップ、ミニシアターの上映などなど、さまざまな形でクリエイティブな活動を行っている。
オリジナルの長期ワークショップシリーズも特徴的だ。ボランティアに参加する市民はコラボレーターと呼ばれ、アーティストと共に本気で制作に協力する。2004年にはピンボールカメラを、2005年には市内の記憶収集を、2007年には本制作のプロセスを、2008年にはパフォーマンスを追求するプロジェクトなどを行った。2005年にアーティストグループフタボンコと市民コラボレーターグループ「オモイデコレクタス」とともに、市内にあるれる記憶収集を追求したプロジェクトは、日めくり式万年カレンダーとして商品化され今でも買うことができる。
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メディアテクノロジーと社会を考えるシリーズでは、携帯電話のカメラを使ったルールとマナーの意味を追求する「ケータイ・スパイ・大作戦」を実施。参加者自らが、メディア社会のルール作りに参加することの意義をとらえようとした試みだ。そのほかにも、一流の講師を招き、市民が主体となって参画するワークショプが開かれている。
 
2012年9月、館内の一角ではイギリスから研究に訪れたメディアアーティストがバーチャル3D映像の実験をしていた。平日の学校帰りに図書館に来た子どもたちが、その公開画像に何気なく触り、チェックをしていたアーティスト本人と楽しそうにジェスチャーを交わす。海外の最先端のメディアアートを研究するアーティストの作品に触れ、語り合う場が、子どもたちにとってはもはや日常の一部となっているのだ。
創造の過程を地域とともに歩んできたことで、YCAMは最先端の創造の場でありながら、垣根の低い存在になっているのかもしれない。
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2013年に10周年を迎える。10周年記念は「アートと環境の未来・山口 YCAM10周年記念祭」を開く。 文化施設としての枠を超えた次世代を見通すアートとメディアの新しい関係性の創造と発信拠点として、自然環境から情報環境までを包括する「環境」と「アート」の未来を考え次の10年に向けた試みを、山口から発信していく。

田中摂 

地域回想法事業にみる博福連携

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博物館の新たな価値づくりが愛知県で生まれている。1990年、師勝町歴史民俗資料館として開館。同地区の出土品や埋蔵文化財、民俗資料を収蔵・展示し、企画展も「弥生人の棺」「円空仏の微笑み」等をタイトルにした歴史・民俗テーマを主流としていた。この中において、館の収蔵展示方針の変革を試みた企画展が1993年「屋根裏の蜜柑箱は宝箱」として登場。大盛況となった。これを契機に地域の方々からの昭和初期に使われていた生活用具が多数寄贈され、1997年特別展「日常が博物館入りする時-ヒトの日常生活をモノで残していく拠点・昭和日常博物館誕生!」を開催し『昭和日常博物館』の呼称がスタートする。2006年、西春町と師勝町が合併した際に、正式名称である北名古屋市歴史民俗資料館の下に『昭和日常博物館』の別称を登録し、昭和にフォーカスした運営方針が広く定着するに至った。

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収集・収蔵は昭和初期から昭和50年代、特に昭和30年代の生活用具を中心にコレクション。すでに10万点以上となり、常設展示は約1万点となっている。近年では昭和レトロブームもあり、他の博物館への展示品貸し出しも行っている。

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収蔵品を展示以外の目的に利活用する博物館への転進

「回想法」導入は、所蔵品の充実とともに地域の来館者とのコミュニケーションの中から生まれたと考えられる。
回想法は1960年代にロバート・ワグナー(米)により提唱。従来、病院や施設において認知症高齢者のケア、介護予防・認知症予防として取り組みがなされてきた。2002年北名古屋市で取り組みが始まった思い出ふれあい事業は、地域に暮らす心身の健康維持を目的として回想法を採用し浸透。地域の人々のために行う回想法を北名古屋市では「地域回想法」と呼び、高齢化対策の一つとして注力している。この活動の一翼を担っているのが昭和日常博物館なのである。館内を歩くと、高齢者同士が談笑しながら「懐かしい」と口々に言っている光景が散見される。高齢者がかつて使用し、使われなくなった生活用具をもう一度見て、触り、元気になるという取り組み…博物館×福祉=博福連携の実践である。

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回想法の実践手法は多岐にわたり、昭和日常博物館、市役所、福祉・医療・教育機関、老人保健施設・NPO法人の連携で実行されている。具体的には(1)お出かけ回想法=高齢者施設、デイサービスにおいて博物館を見学利用する施策、(2)回想法スクール=固定されたグループで定期的に回想法を行う施策、(3)回想法キット=博物館が保有する実物資料の中から高齢者の記憶を呼び覚ますモノを選び、回想法の現場に貸し出すキット。…の3種。
※各施策の企画運営は北名古屋市回想法センター(教育委員会生涯学習課)が主管となり、 昭和日常博物館は回想法の場、実物資料の提供を実施。

2002年に日本博物館協会に「博物館における高齢者を対象とした学習プログラムの開発委員会」が開設。昭和日常博物館は回想法の事例紹介を行い、好評価を得た。また、徐々にではあるが回想法を導入する博物館も増え、愛媛県立歴史文化博物館・氷見市立博物館・葛飾区郷土と天文の博物館・岡山県立博物館等が実践している。今後さらに回想法は普及浸透し、高齢化社会のニーズに応えながら博物館の価値をよりよく進化させていくと考えられる。

林 典彦
 
 

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