高知市内に流れる川沿いに突如現れる、古い藁倉庫群。高知の歴史を感じさせる一角です。そしてこの一角に新しく藁工ミュージアムが昨年誕生しました。近くまで行ってみるととても明るくリノベーションが施されていて、ひとつひとつの倉庫に新しい活動が生まれています。ここはミュージアムだけではなく、バル、ショップ、ギャラリー、美容院、アーティストが集まる場、などなど複合アートゾーンになっているのです。
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3月は、「トマトアートフェスタ」特集。トマトをテーマにしたはがき作品を全国公募し、集まった作品を展示しています。面白いのは、展示だけではありません。ミュージアムの隣にある土佐バルと連携し、そしてその隣の蔵を使って、トマトを味わい愉しむワークショップを開催していました。講師は「きんこん土佐日記」で大人気の高知のマンガ家村岡マサヒロさん。

参加者たちはまずは土佐バルに行き、高知のトマト料理を味わいます。
トマトワークショップ1
美味しい食事ではじめて会う参加者同士もうちとけあい、(私も席で一緒になった地元のおふたりといきなり仲良くなってしまいました)、トマトが実は高知の名産であることを知ります。そして、それぞれの印象を一枚の絵に表現していきます。
トマトワークショップ2
アートイベントが好き、村岡さんのファン、近所だから、おいしいものが食べられるから、いろんな理由でふらっと来た参加者は、トマトを五感で愉しみ、気づけば「高知の名産トマト」について詳しくなっていっていきます。

藁工ミュージアムのしかけはそういうところに面白さがあります。学芸員の方に話を聞くと、いかにふらっと入ってきてもらってアートを体験してもらえるか、そのきっかけづくりにとても工夫をされていました。この藁工ミュージアムは、アールブリュット(専門の美術教育を受けていない人が自発的に生みだした、既存の芸術技法や方法論にとらわれない芸術)を主軸とした美術館としてオープンしています。聞けば館長という存在もいない、そしてとても自然に障害のある方が受付や案内で働いてらっしゃり、まるで仲の良いご近所づきあいかのように、各蔵同士が一緒にイベントを起こしたり、活動を外に拡げています。

高知の歴史を象徴するこの藁倉庫から、アートが湧きでて人を呼び込み、そこで生まれる様々な活動がまちにこぼれていました。高知の歴史を感じながら、新たに生まれていく高知の文化を感じさせる場所です。
藁工ミュージアム http://warakoh.com/museum

田中摂