場づくりマーケティング・コンソーシアム

カテゴリ : 調査

Ⅲ  自治体が考える施設の成果と課題

 自治体と施設の関係をみてみる。自治体は施設をどのような位置づけにとらえ、活用しているのだろうか?【図5】に、設置効果の評価手法の上位を施設別にランキングでまとめた。同じ手法を色分けで示しているが、いずれの施設も「来場者・利用者数の達成」が最も多い。次いで「来場者・利用者の満足度」が多いが、道の駅・物産館・観光案内所 では、「売上げ・利益達成」や「観光客数の増加」が満足度を上回っており、観光や物産面での成果をより重視する傾向にある。また博物館と資料館では「その土地の文化や風土のイメージ形成」、動植物園と水族館では「観光客の増加」を成果として評価する割合も高い。

【図5】施設の設置効果の評価手法(各施設ごとに上位5項目を掲載) 
ブログ用

 では、自治体は施設に対してどのような課題があると考えているのだろうか?【図6】に、課題の上位を施設別にランキングでまとめた。前項と同様に同じ課題を色分けで示しているが、いずれの施設も「施設の維持・管理」が最も多い。次いで「PR・広報活動」と「サービスの向上」が各施設とも上位に挙げられた。施設別の特徴としては、道の駅・物産館・観光案内所では「売上げ・利益の確保」が、他の施設では「来館者・利用者数の未達成・減少」が上位と、成果の考え方が異なる。また美術館と科学館で「学校向けプログラムの充実」、博物館や水族館などで「地域資源と連携」を課題に挙げる割合が高い点も特徴的である。

 【図6】施設の課題(各施設ごとに上位5項目を掲載)
図2

 このような課題を踏まえ、施設への施策の活用・導入意向としては、「ユニバーサルデザイン化」、「バリアフリー化」など誰もが利用しやすい環境の整備とともに、「スマートフォンやタブレット端末などを活用したサービスの導入」や「TwitterやFacebookなどを活用した情報発信」などが上位に挙げられた。最新の機器やインターネットを活用し、施設の積極的な情報発信やサービス向上を狙う姿勢がうかがえる。

【図7】施設への活用意向 
 図3

加藤 昌俊

Ⅱ 自治体が抱える社会課題と取り組み

 自治体では、地域ブランド化の取り組みが進んでいるが、具体的にどのような社会課題を抱えているのだろうか。特に重視して取り組んでいる社会課題を複数回答で聞いたところ、【図3】の通り「少子化対策/子育て支援」が最も多く、次いで、震災で優先的な取り組みが求められる「防災」が挙あげられた。以下、「観光産業の活性化」「農林水産業の支援」「住民の定住促進」が続く。 

【図3】特に重視して取り組んでいる社会課題(上位10項目のみ掲載)
  
図3_地域ブランド調査

 では、これらの社会課題に対し自治体はどのような取り組みを行っているのだろうか?【図4】に取り組みが多くなされている社会課題を示した。<施設の設置>では、社会課題として最も多く挙げられた「少子化対策/子育て支援」とともに、「文化振興」や「観光産業の活性化」が上位。また、<市民協働>では「環境整備・美化活動」「防災」「治安維持・防犯」といった身近な課題とともに、「自然や歴史・産業遺産の保護」や「文化振興」も多く挙げられ、市民の参画が進んでいる。
なお、<民間企業・団体と協力>では「地元産業の活性化」、「観光産業の活性化」「農林水産業の支援」と産業活性化に関する課題が多く挙げられた。

【図4】社会課題別の取り組み実施(各上位5項目のみ掲載)
 
図4_地域ブランド調査


加藤 昌俊

 このところ、全国各地で地域のブランド化の取り組みが進んでいる。地域の独自の文化・風習や県民性をテーマにしたテレビ番組が人気を集め、また”ゆるキャラ“や”B級グルメ“のグランプリの結果がワイドショーを賑わすなど、地域ブランドが一種の「ブーム」になっている。しかし、全国で地域ブランド化の取り組みが進むなか、居住人口の増加や社会課題の解決といった、実効性のある成果にまでつなげられているケースは、まだ少ない。
地域に注目が集まる今、「地域のブランド化」を一時のブームに終わらせることなく、持続可能かつ発展的な活動につなげていくためには、何が必要だろうか。

 そこで、場づくりマーケティング・コンソーシアムでは、地域の施設に関して主体的な役割を担う「自治体」を対象に、地域のブランド化の状況とともに、関与する施設の状況や課題、今後の意向等を把握する調査を2012年8月下旬から9月にかけて実施した。
地域のブランド化と施設を関連付けて取り上げた理由は、地域のブランド化が『地域の独自性(「違い」)に関心を持ち、ファンになってもらう』ことが目的であり、それには地域を表す「場」、ミュージアムが重要と考えたためである。ミュージアムが施設内にとどまらず、まち全体を変える力を持ち得るのか?その観点から、調査結果をシリーズで紹介したい。

 今回は、その1回目として、地域ブランド化の現状をまとめる。

Ⅰ.地域ブランド化の現状
 地域ブランド化に際しては、【図1】の通り、「民間事業者」、「経済団体・業界団体」、「NPO組織・住民組織・ボランティア」など多様な関与者がみられ、自治体単独だけではなく、さまざまな組織とのコラボレーションで取り組みが進められている。
 
【図1】地域ブランド化への、自治体以外の関与者 
図1

 地域ブランド化の取り組み成果は、【図2】の通り、「地域のイメージアップ」、「地域の認知度向上」、「観光客の増加」で、「期待以上」と「期待どおり」の合計が4割前後と高い。一方で、「農水畜産業の担い手の確保」、「雇用機会の増加」、「中心市街地や商店街の活性化」などでは「期待以下」が3割弱と、比較的成果が低い状況。地域活性化のきっかけにはなっているものの、地域経済の立て直しにまで至っている例は多くないといえる。

【図2】地域ブランド化の取り組み成果
図3
加藤 昌俊 

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