場づくりマーケティング・コンソーシアム

東洋経済新報社主催のセミナー「マーケティング新時代の成長戦略」にて、
事例講演
 「マーケティング3.0における場づくりのポイント」
を行いました。

コトラーのマーケティング3.0の翻訳監修者である早稲田大学の恩蔵教授の基調講演
「マーケティングの革新 マーケティング3.0」を受けて、企業や行政における場を活用したコミュニケーション戦略について、ソーシャルメディア、個人の経験価値の向上、ダブルボトムラインでの評価などをキーワードに構成。場での顧客との関係づくりを通じ、企業やブランドへの支持層を獲得・拡大する「カルビープラス」「テーラメイドゴルフのフラッグシップショップ」などを事例として紹介しました。 小島

  

フォーラム全体


山口情報芸術センター、通称「YCAM(ワイカム)」。東の仙台メディアテーク、西のYCAMとも言われる、図書館とメディア系の場が一体となった空間だ。
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YCAMは、メディアテクノロジーを軸とする新しい芸術文化の創造・発信を担い、また併設する山口市立中央図書館と一体となってまちづくりの中心的な役割を担う施設として2003年にオープンした。館内は、タイプの異なる3つのスタジオや創作・学習室、カフェ、そして最新の映像情報機器とそれをサポートするスタッフを擁した「YCAM InterLab」があり、隣には図書館がある。
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 これまでダンスや演劇といった身体表現、メディアアートや現代美術の企画展、市民の美術発表の場、演劇上演やワークショップ、ミニシアターの上映などなど、さまざまな形でクリエイティブな活動を行っている。
オリジナルの長期ワークショップシリーズも特徴的だ。ボランティアに参加する市民はコラボレーターと呼ばれ、アーティストと共に本気で制作に協力する。2004年にはピンボールカメラを、2005年には市内の記憶収集を、2007年には本制作のプロセスを、2008年にはパフォーマンスを追求するプロジェクトなどを行った。2005年にアーティストグループフタボンコと市民コラボレーターグループ「オモイデコレクタス」とともに、市内にあるれる記憶収集を追求したプロジェクトは、日めくり式万年カレンダーとして商品化され今でも買うことができる。
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メディアテクノロジーと社会を考えるシリーズでは、携帯電話のカメラを使ったルールとマナーの意味を追求する「ケータイ・スパイ・大作戦」を実施。参加者自らが、メディア社会のルール作りに参加することの意義をとらえようとした試みだ。そのほかにも、一流の講師を招き、市民が主体となって参画するワークショプが開かれている。
 
2012年9月、館内の一角ではイギリスから研究に訪れたメディアアーティストがバーチャル3D映像の実験をしていた。平日の学校帰りに図書館に来た子どもたちが、その公開画像に何気なく触り、チェックをしていたアーティスト本人と楽しそうにジェスチャーを交わす。海外の最先端のメディアアートを研究するアーティストの作品に触れ、語り合う場が、子どもたちにとってはもはや日常の一部となっているのだ。
創造の過程を地域とともに歩んできたことで、YCAMは最先端の創造の場でありながら、垣根の低い存在になっているのかもしれない。
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2013年に10周年を迎える。10周年記念は「アートと環境の未来・山口 YCAM10周年記念祭」を開く。 文化施設としての枠を超えた次世代を見通すアートとメディアの新しい関係性の創造と発信拠点として、自然環境から情報環境までを包括する「環境」と「アート」の未来を考え次の10年に向けた試みを、山口から発信していく。

田中摂 

地域回想法事業にみる博福連携

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博物館の新たな価値づくりが愛知県で生まれている。1990年、師勝町歴史民俗資料館として開館。同地区の出土品や埋蔵文化財、民俗資料を収蔵・展示し、企画展も「弥生人の棺」「円空仏の微笑み」等をタイトルにした歴史・民俗テーマを主流としていた。この中において、館の収蔵展示方針の変革を試みた企画展が1993年「屋根裏の蜜柑箱は宝箱」として登場。大盛況となった。これを契機に地域の方々からの昭和初期に使われていた生活用具が多数寄贈され、1997年特別展「日常が博物館入りする時-ヒトの日常生活をモノで残していく拠点・昭和日常博物館誕生!」を開催し『昭和日常博物館』の呼称がスタートする。2006年、西春町と師勝町が合併した際に、正式名称である北名古屋市歴史民俗資料館の下に『昭和日常博物館』の別称を登録し、昭和にフォーカスした運営方針が広く定着するに至った。

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収集・収蔵は昭和初期から昭和50年代、特に昭和30年代の生活用具を中心にコレクション。すでに10万点以上となり、常設展示は約1万点となっている。近年では昭和レトロブームもあり、他の博物館への展示品貸し出しも行っている。

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収蔵品を展示以外の目的に利活用する博物館への転進

「回想法」導入は、所蔵品の充実とともに地域の来館者とのコミュニケーションの中から生まれたと考えられる。
回想法は1960年代にロバート・ワグナー(米)により提唱。従来、病院や施設において認知症高齢者のケア、介護予防・認知症予防として取り組みがなされてきた。2002年北名古屋市で取り組みが始まった思い出ふれあい事業は、地域に暮らす心身の健康維持を目的として回想法を採用し浸透。地域の人々のために行う回想法を北名古屋市では「地域回想法」と呼び、高齢化対策の一つとして注力している。この活動の一翼を担っているのが昭和日常博物館なのである。館内を歩くと、高齢者同士が談笑しながら「懐かしい」と口々に言っている光景が散見される。高齢者がかつて使用し、使われなくなった生活用具をもう一度見て、触り、元気になるという取り組み…博物館×福祉=博福連携の実践である。

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回想法の実践手法は多岐にわたり、昭和日常博物館、市役所、福祉・医療・教育機関、老人保健施設・NPO法人の連携で実行されている。具体的には(1)お出かけ回想法=高齢者施設、デイサービスにおいて博物館を見学利用する施策、(2)回想法スクール=固定されたグループで定期的に回想法を行う施策、(3)回想法キット=博物館が保有する実物資料の中から高齢者の記憶を呼び覚ますモノを選び、回想法の現場に貸し出すキット。…の3種。
※各施策の企画運営は北名古屋市回想法センター(教育委員会生涯学習課)が主管となり、 昭和日常博物館は回想法の場、実物資料の提供を実施。

2002年に日本博物館協会に「博物館における高齢者を対象とした学習プログラムの開発委員会」が開設。昭和日常博物館は回想法の事例紹介を行い、好評価を得た。また、徐々にではあるが回想法を導入する博物館も増え、愛媛県立歴史文化博物館・氷見市立博物館・葛飾区郷土と天文の博物館・岡山県立博物館等が実践している。今後さらに回想法は普及浸透し、高齢化社会のニーズに応えながら博物館の価値をよりよく進化させていくと考えられる。

林 典彦
 
 

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