場づくりマーケティング・コンソーシアム

シアトルは、ジミー・ヘンドリックスやニルヴァーナなどアメリカのロックやポップスにおいて、一世を風靡したミュージシャンを数々産んできたまちでもある。そんなシアトルのミュージックシーンを堪能できるミュージアムが、EMPだ。

万博の跡地である大きな公園シアトルセンター内に一際目立つゴールド色の建物。ミュージアムは、ミュージックやSFカルチャーに焦点を当てている。中央で迎えるのは、ピンクライトに巨大なスクリーンでライブ映像が流れるアリーナ。ミュージアムではなくて、コンサート会場に来たのかと思わせる迫力。音楽を知るではなく、感じることに焦点を当てている。だからMuseumではなく、Experience Projectなのだそうだ。
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メイン展示会場である2階は、アメリカのロック、ポップの歴史、ジミー・ヘンドリックスの生誕70周年ギャラリー、ニルヴァーナのギャラリー。ここでも、王道的に彼らのコンサートの衣装や楽器が展示されてはいるが、彼らの曲を自分の好みに合わせて、ボーカルメインで聞くか、解説メインで聞くか、はたまたリズムメインで聞くか。それぞれカスタマイズできるコーナーが各所に用意されている。歌手で選ぶ、地域で選ぶ、ジャケットで選ぶ、など好みに合わせて展示を見る仕掛けもあり、根強いファンにも、観光ついでによった人にも音楽を味わってもらう体験作りに事欠かない。
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最も象徴的なのが、3階のSound Lab(サウンドラボ)。
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ギター、ドラム、キーボードの前に立つと、初心者には単純なキーで一曲弾けるように、弾ける人にはコラボできるように、システムが組み込まれている。
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さらに、作曲をしたり、ライブセッションをしたり、編集したり、オリジナルのポスターを作成したり、と曲づくりの一連も体験できる。ボーカルブースでプロ顔負けになりきって歌う子ども、ギターセッションに夢中になっている高校生や、編集に真剣に取り組む大人の女性、ラップに笑ながら挑戦する中年男性たち。密集したラボのなかでは、誰もがミュージシャンになっている。
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シアトルのまちには小さなライブハウスがたくさんあり、「オリジナルの」「新しい」ミュージシャンを探すことに余念が無い音楽好きが多い。そういった風土があるからこのミュージアムが出来たのだろうが、またこの拠点ができたことで、さらにそれをシアトルの誇れるカルチャーとして確立させているようだ。
観光客には、とんがったミュージシャンやロック文化を、それを生み出す「シアトル」の魅力として感じてもらう。シアトルに住む人たちには、ミュージシャンになり切ってもらい、またここが偉大なミュージックカルチャーを生み出すまちであることを再認識してもらう。それは、人々をさらにまちのライブハウスや音楽の生まれる様々な場へと送り込み、あるいはよりダイナミックなステージへ送り込んでいく。ここは、EMPという名の通り、音楽の体験を通じてシアトルの生きたミュージックカルチャーと個人をつなぐプロジェクトを生み出すミュージアムだ。

田中 

実践的ビジネストレーニング誌「Think!」冬号の特集:「イノベーションの起こし方」において、新しい価値を生む「場」のつくり方〜と題したインタビューを受けました。
コンソーシアムの活動を通じて得た知見をもとに、コトラーのマーケティング3.0時代において、「場」が有効なツールであること、「場」でのイノベーションのあり方について整理していただいております。 小島 敏明     
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Ⅱ 自治体が抱える社会課題と取り組み

 自治体では、地域ブランド化の取り組みが進んでいるが、具体的にどのような社会課題を抱えているのだろうか。特に重視して取り組んでいる社会課題を複数回答で聞いたところ、【図3】の通り「少子化対策/子育て支援」が最も多く、次いで、震災で優先的な取り組みが求められる「防災」が挙あげられた。以下、「観光産業の活性化」「農林水産業の支援」「住民の定住促進」が続く。 

【図3】特に重視して取り組んでいる社会課題(上位10項目のみ掲載)
  
図3_地域ブランド調査

 では、これらの社会課題に対し自治体はどのような取り組みを行っているのだろうか?【図4】に取り組みが多くなされている社会課題を示した。<施設の設置>では、社会課題として最も多く挙げられた「少子化対策/子育て支援」とともに、「文化振興」や「観光産業の活性化」が上位。また、<市民協働>では「環境整備・美化活動」「防災」「治安維持・防犯」といった身近な課題とともに、「自然や歴史・産業遺産の保護」や「文化振興」も多く挙げられ、市民の参画が進んでいる。
なお、<民間企業・団体と協力>では「地元産業の活性化」、「観光産業の活性化」「農林水産業の支援」と産業活性化に関する課題が多く挙げられた。

【図4】社会課題別の取り組み実施(各上位5項目のみ掲載)
 
図4_地域ブランド調査


加藤 昌俊

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