場づくりマーケティング・コンソーシアム

東京、武蔵野の原風景が残る玉川上水沿いに位置する広大な小金井公園に、江戸東京たてもの園はあります。移築された江戸・東京の歴史的な建造物たちが、大正昭和のモダンな家や武蔵野の民家が並ぶ西ゾーン、由緒ある歴史的建造物が並ぶセンターゾーン、下町の町並みが再現された東ゾーンの3つのエリアに分かれていてます。一歩足を踏み入れば、タイムスリップしたかのような街並みの世界を体験できるのです。
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江戸時代の藁葺屋根の民家に行くと、半被を着たボランティアさんが、釜に火を入れて煙を起こしています。防虫等のための燻煙というものなのですが、それがたてものと一体化し、まさに当時の面影が伝わってくるよう。銭湯から出てきたガイドさんに声をかけられて入ってみれば、学生コーラスが合唱。観客が笑う賑やかな様子は、まるで昔の銭湯を思わせます。
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広場では、コマ、輪回し、竹馬、などなど。大人は懐かしそうに、子どもは新鮮な表情で昔の遊びに挑戦。ここでも自由自在に道具を操り、遊び方をおしえてくれるベテランボランティアさんがいました。商家や蔵に囲まれた下町風情漂うエリアで、賑わう人々の様子は、まさに木村伊兵衛の写真の世界でした。
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ここでは、「たてもの」一軒に対して必ず1~2名のボランティアさんがおり、たてものの説明やガイドツアーをしてくれます。さらにそれぞれの特技や知識を使って、「たてもの」の歴史や由来に関係する語りや実演などもしているのです。そのボランティアさん、なんと200名近くいるんだとか。園内では、伝統工芸の実演や、七夕祭りや梅漬け・お月見飾り・節分といった伝統的な日本の年中行事を再現したイベントが頻繁に開催されています。訪れた人は知らずのうちに、「たてもの」と「ひと」の相乗効果に、そこにあった「暮らし」に触れることができるのかもしれません。
近年小金井では江戸東京野菜が再び盛んに作られているのですが、このたてもの園で、江戸東京野菜を使ったイベントや企画をおこしていたことは、大きなきっかけとなっていたようです。忘れられた、失われた「暮らし」に触れ、新たな「暮らし」をつくるつながり、活動が生まれる。たてもの園はそういうつながりを生む場になっています。

田中摂


はっち一枚目



JR八戸線本八戸駅で降り、目的地はっち目指して歩き始めるも、道沿いで目につく緑色のふきだしたち。「もう30年もやっているらしいよ」「このマスター、サッカーも大好きらしいよ」「八戸ではじめて!のnail salonらしいよ」 など。まちの風景に化しているこの緑色のふきだしは何ものか?と思っていたところ、期間限定プロジェクト「八戸のうさわ」の一部だったもの。イベントが終わった今も、気に入ったお店はそのままに残しているのだそう。

さて、そのうさわの発信源、八戸ポータルミュージアム「はっち」に足を踏み入れて驚いた。 はっちが、「ポータルミュージアム」と標榜する所以。それは、従来の専門分野にそった資料展示を行うミュージアムの機能をはるかにこえていたからだ。八戸の伝統文化やお祭り、偉人を紹介する展示、B級グルメのミニチュア展示はもちろんだが、市外からの来訪者に向けた横丁や市場など八戸の見どころを紹介する観光案内、子育て支援を目的に小さな子どもも大人もゆったり過ごせる交流スペース「こどもはっち」、また、八戸の地域資源を活かした市民によるアンテナショップの数々、音のスタジオやキッチン、ひろばなど、フロアのいたるところに、人と人が交流するスペースが設けられているのだ。

まさに八戸に暮らす人々の生活の息づかいがきこえてくる、八戸の人と魅力が活きている場所だった。

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▲はっちのエントランスにて。カラフルな288体の八幡馬たちが迎えてくれます。

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▲こどもはっちにて。モチーフの「8」を館内様々なところで発見する楽しみがあります。

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▲食のものづくりスタジオ、『里山夢食堂』さんにて。ここにも吹き出しが!

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▲市内アーティストと子どもたちの作品 ~八戸はみんな家族~

市役所の方にお話を伺ったところ、はっちは、シャッターがおり空洞化していくまちの中心地、商店街に活気を取り戻すため、中心市街地活性化の事業の起爆剤としてたちあがったとのこと。地域の資源を大事に想いながら新しい魅力を創りだすところとして、「はっちは、まちを元気にします」をミッションに掲げている。

2011年2月のオープン以来、様々な取り組みに走り続けているはっちだが、その成果が、まちなかの歩行者の数の増加や、空いていた店舗が復活するなど様々な事象にあらわれはじめている。


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佐竹和歌子

高知市内に流れる川沿いに突如現れる、古い藁倉庫群。高知の歴史を感じさせる一角です。そしてこの一角に新しく藁工ミュージアムが昨年誕生しました。近くまで行ってみるととても明るくリノベーションが施されていて、ひとつひとつの倉庫に新しい活動が生まれています。ここはミュージアムだけではなく、バル、ショップ、ギャラリー、美容院、アーティストが集まる場、などなど複合アートゾーンになっているのです。
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3月は、「トマトアートフェスタ」特集。トマトをテーマにしたはがき作品を全国公募し、集まった作品を展示しています。面白いのは、展示だけではありません。ミュージアムの隣にある土佐バルと連携し、そしてその隣の蔵を使って、トマトを味わい愉しむワークショップを開催していました。講師は「きんこん土佐日記」で大人気の高知のマンガ家村岡マサヒロさん。

参加者たちはまずは土佐バルに行き、高知のトマト料理を味わいます。
トマトワークショップ1
美味しい食事ではじめて会う参加者同士もうちとけあい、(私も席で一緒になった地元のおふたりといきなり仲良くなってしまいました)、トマトが実は高知の名産であることを知ります。そして、それぞれの印象を一枚の絵に表現していきます。
トマトワークショップ2
アートイベントが好き、村岡さんのファン、近所だから、おいしいものが食べられるから、いろんな理由でふらっと来た参加者は、トマトを五感で愉しみ、気づけば「高知の名産トマト」について詳しくなっていっていきます。

藁工ミュージアムのしかけはそういうところに面白さがあります。学芸員の方に話を聞くと、いかにふらっと入ってきてもらってアートを体験してもらえるか、そのきっかけづくりにとても工夫をされていました。この藁工ミュージアムは、アールブリュット(専門の美術教育を受けていない人が自発的に生みだした、既存の芸術技法や方法論にとらわれない芸術)を主軸とした美術館としてオープンしています。聞けば館長という存在もいない、そしてとても自然に障害のある方が受付や案内で働いてらっしゃり、まるで仲の良いご近所づきあいかのように、各蔵同士が一緒にイベントを起こしたり、活動を外に拡げています。

高知の歴史を象徴するこの藁倉庫から、アートが湧きでて人を呼び込み、そこで生まれる様々な活動がまちにこぼれていました。高知の歴史を感じながら、新たに生まれていく高知の文化を感じさせる場所です。
藁工ミュージアム http://warakoh.com/museum

田中摂

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